「うちの会社は●レベル」 という基準は、どうやって決めましたか?
● 司会: 日本航空は6レベル、KDDIは8レベル、プランタン銀座は10レベル、ホテルオークラは7レベル、というようにレベルを決めておられます。それぞれのレベルはどういう手続きで決定されたのでしょうか?
● 木崎: 日本航空では、実際に客室乗務員を指導・管理する、管理職のところを、レベルスケールを持って効いて回りました。「どのレベルまでだったらだいたいオーケーですかねえ」というふうにです。年配の、上位職の、特に男性になるに従って、許容する色はだんだん濃くなる傾向がありました。さらに、お客さまからいただく声、あとはマーケット調査の結果などからも検討して、このくらいのレベルなら許容していただけるのではないかというところを、決めました。これがあまり甘過ぎるようであれば、もう少し濃くすればいいし、もう少し許容できるのであれば、明るくすればいい、ということで、とりあえずレベル6でスタートした、というのが現状です。
● 司会: 年代、性別によって、許容するレベルに差がある?
●木崎: そうですね。カラースケールを示して、「このレベルどうですか」という話をすると、「それでは明るい」というのですが、実際に7、6、5くらいのレベルに染めている人を、その部長の所に連れて行き、「どのレベルだったらいいですか」と伺うと、レベルスケールとは違うこと言います。レベルスケールと実際の人間とでは、同じ明るさでも、印象が違うようです。そのあたりは調整が必要ですね。
●木村:私どもKDDIも、まず1つレベルスケールを購入いたしまして、社内をあちこちヒアリングしてまわりました。やはり年代性別によって基準がまったくバラバラでした。
ただ、私どもの中では、男性の方が比較的甘かったです。特に髪の毛の色にあまりこだわらない方が多かった。逆に、私ぐらいの年齢の女性が一番こだわりを持っていました。
たとえば私は、接客業なのだから、もう少し暗い方じゃないとまずいのではないか、というふうに思っておりました。ほかの女性たちにも聞きましたが、感じ方は、本当にさまざまでした。
レベルを決定するに当たって、一番、本末転倒になってはいけないと思ったのは、やはり、働く方々の仕事に対するモチベーションを下げてはいけない、ということでした。
ガチガチに規定されて、「もうauショップで働くのいやだ」 になってしまったら、もともこもないわけで、やはりある程度の枠を持たせつつ、その中での、そのおしゃれを楽しんでいただけるような、範囲にするべきだろう、ということを考えました。
それから、これは社内の裏話ですが、例えば、JALさんは6までですよね、と。たぶん、人の命を預かるご商売でらっしゃるので、そこはやっぱり安心感、最大限の安心感をたぶん求められますよね、と。ホテルオークラさんは、伝統と格式がある接客業ということで7レベル。じゃあ、私ども、携帯電話を扱うauショップはどうなんだろう、ていうことを後付でいろいろ考えてみました。
そこで、プラスアルファの、これからのお客さまに、いい商品を提供していくんだっていう、期待感であるとか、わくわく感であるとか、通信・携帯電話の持っている元気のよさっていうところをもう少しアピールした髪の毛の色があってもいいんじゃないかっていうことで、こころもち、8までちょっと上げてみました、というところで理由付けをしております。(笑)
●司会:納得しました。(笑)
●八木: プランタン銀座では、サービスのリーダーが全館で12名おります。そのメンバーと、私が所属しております総務部のメンバーで決定をいたしました。なぜ10レベルに決定したかといいますと、まったくKDDIさんと同じ意見でした。
私の意見が一番厳しかったんです。(笑) 8レベルで止めようと思っていたんです。ところが、男性、これは若い人も年配の人もいるんですが、年配の男性が、「八木さん、プランタン銀座はファッションを売っているお店なのだから、10レベルで行きましょう」と。「では、とりあえず最初は10レベルでスタートしてみましょう。ただし、これで明る過ぎたら、9、8レベルに落とさせていただきますよ」、という形では言っていたのですが、実際にこの基準で立ち上がったところ、極端に赤くはないし、週2回の私服勤務デー(社員も私服で店頭に立つ日)にも、お洋服と髪の毛のカラーの色のバランスがとても合って、従業員にも非常に好評です。
●園本: 私どもでは、人材開発課という課の中で、レベル7に決めさせていただきました。やはりみなさま同様、管理職にヒアリングを行い、最終的にはホテル内の総意、お客さまのご要望、そして私どもの制服に一番合う色ということで、7レベルになりました。5、6という、もうちょっと暗い色というのもありますが、もともと照明を少し落とした落ち着いたホテル内ですので、少し明るめの7レベルにすることで、戸外での5、6レベルと同じような印象になるのではないか、ということも考慮いたしました。
レベルスケールの導入は、スムーズにできましたか?
● 司会:レベルスケールの導入はスムーズにできましたか? また、事前に準備されたこと、特に気をつけたことなどありましたらお願いします。
●木崎: はい。かなりスムーズに行きました。混乱するかなあ、と正直心配していたのですが。
大阪を含めて、19の客室乗務員が所属しているユニットがあるのですが、そこのボスに、実際に髪を染めた人を見ていただいて確認を取り付けるなど、しっかりと根回しした甲斐があったかなと思っています。
●今井: 日本航空さんがレベルスケールを導入するのにあたっては、ヘアカラー協会として、出来る限りのお手伝いをさせていただきました。
実際に客室乗務員の方がされているヘアスタイルのウイッグを2種類×30セット用意して、比較検討用に送らせていただいたりしました。そういう根回しが十分に行きわたったからスムーズにやれたということもあるのではないでしょうか。
●司会: ヘアカラー協会はそういうお手伝いもされるのですか?
●今井: やはりなんとしても、レベルスケールを普及させたいので、できる限りのことをさせていただいております。
●木村: KDDIの場合は、導入にあたっては思ったほど抵抗はなく、むしろ、喜んでいただいた声の方が多かったのはちょっと驚きでした。
どこに喜んでいただいたかというと、auショップを運営している代理店さんの代表の方、社長さんといった方々に、です。「困ってたんだよ、今まで。若い女性陣に、その茶髪はないだろうと、言いたいんだけど、言いづらくてしょうがなかった。指標を出してくれてほんとに助かった」と感謝の言葉をちょうだいいたしました。
●八木: 各フロアのマネージャークラス全員にレベルスケールを配布し、「これ欲しかったんです」と歓迎されました。店頭に立って販売していただく方々に、事前のミーティングや面談の場でお見せして、「プランタン銀座の基準はこの10レベルまでですと、ちょっとあなたのお色は12、13に近いので、入店するまでにこの10以内までに変えてくださいね」という話をするのが非常にしやすくなりましたということでした。
それからフロアのマネージャーは男性が多いのですが、従来は、明る過ぎるレベルの女性に対して、なかなか注意ができないでいたそうです。女性同士だと、比較的ずばっと言える方が多いんですけれども。男性たちも、ただ黙ってレベルスケールを出すだけで、注意ができるということで、これもまた非常に喜んでいただいています。
● 園本: ホテルオークラもたいへんスムーズに導入できたと思います。
ある社員からは、「自分は入社する前に少し染めていたんだけれども、就職活動などをして1回黒く戻して、ホテルオークラはおそらく染めてはいけないだろう、という考えだったので黒いままだったんだけれども、それに関して少し疑問を感じていた」というようなことも聞きました。
レベルスケールが入ったことによって、よりおしゃれもできるようになり、女性にとってはとてもうれしい、というふうに聞いております。
●司会: 導入してみてから気付いたちょっと不備な点ですとか、もっと改善すべき点、注意すべき点などはありませんでしたか?
例えば、ヘアカラーは褪色しますから、最初に染めてきてすぐに測るのと、ちょっと時間たってから測るのとでは、明るさが違いますよね。どの時点で測るとか、何かそういうふうな工夫とか改善はされましたか。
●木崎: 日本航空の場合は、規定はあくまで、常に6以内をキープしなさいということなんです。実際、月に一度ぐらいちゃんと毛染めをすれば、褪色するということはないんですけども、ちょっと手を抜いて2カ月くらいおいてしまうと、だんだんだんだん色が明るくなってきて、自分は気がつかないうちに、6のつもりが、実際には7、8、というようなこともあります。そこで規定を徹底させるために、19のユニットにカラースケールを全部配備して、フライトの前後に客室乗務員は必ず立ち寄り、各自確認する、というような作業を行っております。
●木村: KDDIでは、各地域のauの営業の者が、代理店に行く場合にレベルスケールを持参し、確認するようにしています。
それから、集合研修の際にも、ベーシックなマナーとして、当然身だしなみのチェックのひとつとしてレベルチェックを行っています。
その際に、非常に不幸な例だったんですけれども、せっかくauは8以内ということで、美容室に行ってリクエストしたのに、地毛の色が明るすぎたためかどうか、確かに美容師さんは8で染めたのだと思うのですが、仕上がりは8にならなかった。で、その次の日に研修に来て、先生にダメだしをされて、途中で泣き出してしまったという人もいました。
その辺りを、すべて全国の、ヘアカラー協会さんに所属しているところでお願いをすれば問題ないのだと思うんですけれども。
●八木: レベル10までと規定しますと、だいたいがレベル9くらいに染めてきますね、不思議と。そういう方が約半分。あとはレベル10のぎりぎりまで染めてきて、自己流で染め変えて、12、13ぐらいにどんどん明るくなってしまう、という人たちが約半分います。
そこでサービス・チームのリーダーにもそのスケールを持たせておいて、1週間に3回か4回、フロアを全部まわらせて、アドバイスしてもらっています。もう少しトーンを落としてくださいね、などと注意すると、1週間以内には改善します。頑張って12、13の色で現場にいるっていう人は少ないかと思います。
●園本: 八木さんがおっしゃったように、ホテルオークラでもやはり、レベル7ですけれども、はじめは5、6ぐらいにとどめといて、状況を見るという社員がとても多かったです。
●木原: 今井さんにちょっと質問なんですけれども、先ほどKDDIの木村さんから、思ったとおりの色に染まらなかったっていう話がありました。レベル通りに正確に染めるというのは、けっこう難しいことなのでしょうか?
● 今井: はい、難しいですね。
まず、市販のいわゆるホームヘアカラーとは、ぜんぜん色番号が違います。
日本ヘアカラー協会は、カラーの技術を勉強しようということで始まりました。で、ずっと活動しているうちにある大きな問題に気付きました。というのは、勉強するのに、ヘアカラー剤を必ず使います。ヘアカラー剤、現在はこの日本ヘアカラー協会にご協力いただいているメーカーが18社あります。18社それぞれが、色見本(カラーチャート)を出しているんですよ。当然ですが。で、メーカーごとに微妙にみんな違うんです。すると、例えば、勉強会で、今度は8レベルの勉強をするから8レベルに染めてきてくださいと言ったところで、ぜんぜん同じレベルにならない。これじゃ勉強にならない、基準を作ろうよ、ということで、なかば強引に、レベルスケールを作りました。メーカー18社の、一番中間点を取って作り上げたわけです。しかしながら、今言ったように、一般の美容室では、それぞれ異なるメーカーの薬剤を使っています。
いろいろな状況がありますが、簡単に言うと、8のものを7にするんだったら6を使えばいいということですが、実際はそんな簡単にいかないし、それなりに計算しなくてはいけないので、しっかりと勉強・研究してる美容師でないと…。正直、日本ヘアカラー協会のメンバーサロン以外は、まず、まじめな話、ちょっと厳しいと思っています。
●木原: あと、先ほどの園本さんの話を伺って感じたのですけど、その職場の光源、光との兼ね合いっていうのもやっぱり導入するときに検討しないといけないってことですよね。
●今井: そうですね、ヘアカラーは光の見え方、当たり方、それから種類でぜんぜん違って見えます。一般のオフィスですと、だいたい、青みがかって見える。それから、例えばこういう会場のライトですと少し赤めに見えると聞きます。あと、明るさ。ちなみにJAL(日本航空)さんの場合は飛行機の中は暗いから、6より7にしませんかと、お勧めしたのですが、7に決めると8の方向へ行ってしまうからダメだというkとで6になりました。ホテルオーラさんはやっぱり館内が暗いです、だから、7にしても、ほとんど目立たないと思う。
そういうことからも、導入されるときに、その職場の明るさというのは、それなりに気にされた方がいいと思います。
(つづく)


